【レビュー】ÖSSUR RHEO KNEE3
- Shinji Ishikawa
- 2021年3月15日
- 読了時間: 3分
更新日:2021年7月26日
僕はこれまでリハビリ中に様々なコンピュータ制御膝継手を試着しました。
機械式の膝継手はひとつも試したことがありません。
多くの義足ユーザーからしてみたら、きっと考えられないことでしょう。
なぜなら、コンピュータ制御膝継手は高価なゆえ、試着すらできない義足適合者もいるからです。中にはとても羨ましいと思う人や、興味がある人もいるかと思います。
これからシリーズ物として、今まで僕が実際に試着してみた数々のコンピュータ制御膝継手の印象を、忖度なしにレビューしていきます。
まず1本目は、オズール社の「RHEO KNEE3」(リオニー3)についてです。
主な特徴:
人工知能(DLMA)
遊脚相の抵抗を自動調整
自動的に歩行を学習
初期設定は最小限でOK
駆動装置が磁気粘性流体(MR)
力の効率の良い滑らかな動き
内圧を発生しない構造
0.01秒で遊脚抵抗を最大⇔抵抗ゼロに変化可能
※メーカー説明文より抜粋
レビュー:
これが試着したRHEO KNEE3です。
RHEO KNEE3は2014年に登場しました。
僕が試着したものは、2004年に登場した第一世代から数えて、三代目にあたるモデルです。
当初は1ヶ月の予定で借りたけど、結局2週間で返却しちゃいました。
試着中はメーカーの方々が、RHEO KNEE3専用の設定アプリで何度も調整をしたり、足部をRHEO KNEE3との相性が最も良いとされるメーカー推奨のもの(フレックスフット)に交換して何度も歩きました。もちろんアライメントもメーカー推奨値に変更したりもしましたが、結局しっくりこないし歩きにくかったです。挙句、メーカーの方もお手上げで首をかしげる始末。
率直な感想ですが、この膝継手は振り出すときに微妙な力加減をコントロールできません。膝を振り出して伸びきるまでが常に一定の速度なので、不自然に感じるのです。
たとえば油圧のように、伸び切るまでなめらか且つ自然に減衰していく心地よい感じがありません。この印象を形作っている原因は、駆動装置が磁気粘性流体だからではないかと推測します。このフィーリングが好きな人もいるのでしょうが。
そして、RHEO KNEE最大の特徴である人工知能(AI)の恩恵も全く感じられませんでした。15分ほど歩いていればAIが学習するというので、色々な場所を歩いてみましたが、特に印象は変わらず…。
振り出しの感じは不自然で癖があり、残念ですが僕には相性が悪かったです。何気に重量もあって、重さも気になりました。
もっとも、健側(膝)のある場合は、きっと印象が違うのでしょう。健側である程度膝継手の癖をカバーし、それなりに歩けてしまいます。しかし、両足が短断端の僕は健側がありません。その膝継手が持つ特徴や性質などがリニアに体に伝わり、歩行という形になって如実に表れます。
また、このRHEO KNEEには膝継手の上の方にある丸いボタンを押して膝をロック/ロック解除をする機能があります。
しかしこの機能、両大腿義足ユーザーの場合、膝を曲げながらボタンを押すのは至難の業です。
こういう部分だけを見ても、健側のある義足ユーザー向けに設計されたことが想像できます。
とはいえ、ソフトウェアの設定項目の多さや調整幅が広いのは、評価する部分だと感じました。振り出し速度やターミナルインパクトの調整など、ある程度はユーザーそれぞれ好みの設定に調整可能だと思います。
「高価だからきっと高性能」は、義足には当てはまりません。何をもって高性能かを評価するのが大変難しく、使う人の状態やニーズによって、それぞれ求められる性能が違うからです。
最後に、この膝継手を自動車に例えてレビューを締めたいと思います。
RHEO KNEE3は、ランチア デルタなり。
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