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両大腿義足ユーザーのエネルギー消費

  • 執筆者の写真: Kyo
    Kyo
  • 2021年5月11日
  • 読了時間: 3分

更新日:2021年7月25日

こんにちは。共同執筆者のKyoです。

前回の記事「両大腿切断者の身長と体重」で少し触れられていますが、石川さんは太ることができません。

足があった頃から細めで“痩せ体質”ですが、体質だけでなく、両足極短断端で歩いていることでどんどん痩せていってしまいます。それくらい両足義足歩行は、ものすごくエネルギーを消費します。今回はそんなエネルギーにまつわるお話です。



人は生きるためにエネルギーを消費しています。

心臓を動かし、呼吸をし、体温を維持するためにはエネルギーが必要です。何もしなくても、ぼーっとしているだけでも、エネルギーを使って生きています。これを基礎代謝といいます。エネルギー消費の割合は、この基礎代謝が60%ほどを占めていて、残りは食事と、あとは活動量・運動量によるものです。体格や食事は大きく変化しないので、エネルギー消費量は生活の中での活動量や運動量が決定打になるそうです。


では、両大腿義足の人が歩くと、どのくらいのエネルギーを消費するのでしょうか?


実際のエネルギー消費量の計算は、専門知識や器具がないと難しいことが分かりました。

体内では糖や脂質を主なエネルギー源とし、エネルギーを発生させるためには酸素が使われます。そのため、酸素量を測定することでエネルギー消費量を算出する方法があります。


Googleで検索し出てきた文献では、酸素量からエネルギー消費量を算出している方法が多く使われています。両足大腿義足歩行のエネルギー消費は、健常者の360%(約4倍)といっているものもあれば、280%だったり215%だったり・・・。文献になっている以上、統計学的には正しい結果なのかもしれませんが、実際のところは両足大腿切断者といえ個人差が大きいのでしょう。

それでもはっきりしていることは、健常者よりも、片足義足よりも、両足義足の方が遥かに疲れるということです。



そして両足義足の中でも、短断端であればあるほどエネルギーを消費すると考えました。

その理由はなぜか、いくつかあげてみます。

まず、短断端は長断端よりも日常生活の中で動き回ることができます。断端が長いと移乗のときに足がひっかかって邪魔になってしまうものが、短断端であればコンパクトで体重が軽くなる分身軽に動くことができるので、生活活動量は多いといえます。


一方で、短断端の人が義足を履くと途端に動きは限定的になります。

断端が短い=体積が少ない分、義足を操るエンジンが小さくなります。義足に触れている面積が少ないなか、重い義足を扱わないといけない。そうすると、エネルギーをさらに消費することになります。

実際に、石川さんは義足で歩くことを「全速力で走るような運動」と表現しています。それくらい運動強度が高いのでしょう。


まとめると、短断端は日常生活のなかでは有利で、義足歩行になると不利になる。とくに義足歩行では、エネルギーを大量に消費する。義足で歩く限り、筋肉量が増えることはあっても脂肪が増えることはないので、結果太ることができない。太れない。

(石川さんは小食かつ食生活がキチンとしてるので、そこは抜きにします。)


石川さんはもともと痩せていて体重が軽いので、義足で軽い上半身を運ぶことになります。体重が重い人は軽い人よりエネルギーを消費するので、そういう点で石川さんは有利といえます。もしも両足極短断端で太っていたら、歩くことは厳しいでしょう。



もっとも、これまでの話は義足が適合していることが前提です。

ソケットがゆるかったり、ソケットが当たって痛かったり、立つだけで腰が反ったり、膝が折れやすかったり、足部が硬すぎたり。義足が体にあっていないところがあれば、義足によってエネルギーが消耗されてしまいます。

体力を温存しつつ快適に歩くためには、年齢や体重・断端の長さ・歩き方という身体条件もさることながら、義足適合が大前提となります。

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