【レビュー】足部を語る
- Shinji Ishikawa
- 2021年6月20日
- 読了時間: 5分
更新日:2021年7月25日

義足歩行の小話で杖と靴について書いたので、今回は義足の足部について語ります。
先にぶっちゃけてしまうと、どんな足部でも歩くことはできます。
たとえば膝継手となると、物によっては膝折れして歩行不可能になります。おそらく股継手も同様でしょう。しかし、足部はそういった支障をきたすことはまずありません。どんなものでも一応は歩けてしまいます。
実際に、スタビー(短義足)の始めは楕円形の船底のような足底をつけて歩きました。
また、傷痍軍人の足元をみると、足部はなくてただの棒の先で歩いていたようです。
だからといって足部が何でもいいわけではありません。
僕が思うに、足部は歩行の手助けをしてくれる存在です。
・快適に歩けるか
・疲れにくくないか
主にこの2点に足部が貢献するのだと考えます。
まず一歩足を出したとき、踵がついたときの衝撃を一番に受けるのが足部です。この衝撃を吸収してくれる素材であること、感覚的に硬すぎない・柔らかすぎない・跳ねないこと、これらをみます。
次に、体重を全部乗せて反対の足が浮いている間、要は片足立ちになっているとき、足部が安定しているかどうか、グラグラしたり沈み込む感覚がないかなどをみます。
最後に、体重をつま先まで粘って残しておけるかどうかをみます。
これらが全てクリアされれば、快適かつ疲労も抑えて歩くことができると思います。
リハビリの期間中、膝継手だけでなく足部もたくさん試しました。
両足短断端の僕には重い足部は不適合です。そして右足C-Legで左足は固定膝という膝継手の条件で合う足部を選びます。
下腿義足や条件のいい片足大腿義足の場合、足部選びは楽しいかもしれません。なぜなら、足部の性能がはっきりと分かるからです。耳に障害の無い人が様々なヘッドフォンを試すと、細かく評価ができると思います。両大腿義足や短断端など条件が悪い場合は、地面からの距離が遠い分評価は難しくなります。難聴の人に高いヘッドフォンで音を聴かせているようなものだと想像してください。
実際に試した足部はこちら↓
SACH、単軸足部(型番不明)、J-foot、トライアス、Cウォーク、バリフレックス、フレックスフット、キンテラ…
これらの足部を抜粋しレビューを述べていきます。あくまでも、両足短断端の僕が試した感想です。型番や社名は割愛します。また、それぞれの足部を自動車に例えてみました。
■バリフレックス:約600gと重くて硬くて高価。特別良い印象を受けませんでした。可も無く不可もなくと言ったところでしょうか。自動車でいうと、スバル・インプレッサスポーツです。
■キンテラ:約800gととても重いです。油圧制御機能により、良くいえば自由に、悪くいえば勝手に差高を調整するようです。僕はこの油圧特有の、体重がかかったときにじわぁっと沈み込む感覚が苦手でした。油圧制御の設定を一番ソフトにしても、踵をついたとき、まるでスポンジの中に足が入っていくような感覚でした。そして非常に高価な足部なので、試着しても購入に至るケースは少ないのではと思います。自動車には例えられず、僕にとっては文鎮だと感じました。(メーカーの方、ごめんなさい)
■トライアス:現在両足ともに使用しています。トライアングル構造の折り重なったカーボンが特徴です。踵をついた時に衝撃を吸収してくれる一方で、強い反発力を生み出して滑らかに前に押し出してくれます。267gと軽量で柔らかく、断端への負担は少なくて良い足部なのですが、体重をのせたときの安定性がイマイチで、動>静 といった感じが強く少々癖があります。自動車でいうと、ホンダ・NSXです。
■タレオ:試していませんので聞いた話です。横方向への可動性は良いけれど、縦方向への粘りが全くないとのこと。重量は約500gです。乗っていないので自動車には例えません。
■プロプリオフット
■メリディウム:試していませんので聞いた話です。どちらも電子制御の足部です。そして余裕の1000g越え。プロプリオフットにおいては1500gで価格は158万円という意味不明な足部です。ちなみにメリディウムは235万円強。僕がこの足部を両足につけたら、足を振り出すことが困難になり、ついにはソケットが脱げる始末でしょう。自動車に例えるとトヨタ・MIRAIです。
■J‐Foot:ソフト、ミディアム、ハードと3つのキール硬度が選べます。僕の中でここ最近の一押しです。左足ではソフトとミディアムの違いは分かりませんでしたが、ミディアムとハードの違いはすぐに分かりました。それは”しなり”です。体重をのせて粘る際にカーボンのたわみがハードの方ははっきりとしていました。ミディアムのしなり具合が僕の両足にとてもよく馴染んでくれます。約450gと軽量かつ低床で、安定性があります。みんなが食べられる甘口カレー。自動車でいうと、トヨタ・カローラです。
総称して言えることは、僕には”高活動向け”と謳われている足部は合いません。低活動向けといわれている、特徴としては低床でさほどたわまない・硬めの足部が適合します。
高活動向けの足部は、見栄えがよくて高価なものが多いです。例えるとヒールや革靴に似ていて、歩きやすさや快適性はそこまで高くありません。
逆に低活動向けはサンダルや雪駄のようなイメージです。値段は安く構造は至ってシンプル、見た目はさほどよくないですが、路面の状況をしっかりとキャッチし快適性は抜群。
膝継手と同じように「高価だからきっと高性能」というわけではなく、使う人の状態やニーズによって求められる性能は変わります。
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