次世代の膝継手について
- Shinji Ishikawa
- 2021年7月3日
- 読了時間: 3分
更新日:2021年7月25日
義足を構成するパーツの中に「膝継手」というものがあります。
膝継手は、膝より上位で切断した場合に使用する膝の役割を果たすパーツで、機械式のものから油圧制御や空圧制御など様々な種類があります。膝継手に要求される主な機能は、「膝折れしない」ことと「振り出し時のコントロール」です。
現在における最新の膝継手の中には、膝の曲がり具合や歩行全般をコンピュータで制御するものがあります。膝折れせずスムーズに体重移行できることはもちろんですが、ゆっくりと膝を屈曲することができるイールディングと呼ばれる機能などを備えています。
これらの膝継手は、「コンピュータ制御膝継手」と呼ばれており、例えばottobock社のGeniumやC-Leg、またはossur社のRHEO KNEEなどがあります。
健側のある片足大腿切断者で高活動な人の中には、コンピュータ制御膝継手の機能がかえってもどかしく感じる義足ユーザーもいます。
そのいっぽう、僕のような健側のない両足大腿切断者、特に短断端(残っている足が極端に短いこと)で歩くためにはコンピュータ制御膝継手でないと歩くことはできません。
しかし、いくら最新のコンピュータ制御膝継手であっても、歩くために膝を曲げたり伸ばしたりする原動力は、結局残っている足なのです。でも、もし足に代わる原動力があったとしたら、義足の世界が変わると思いませんか?
前置きが長くなりましたが、今回はそんな「未来の膝継手」についてです。
現在、東京大学の構内にオフィスがあるBionicM株式会社では、ロボット工学を応用したパワード義足と呼ばれる次世代の義足の研究開発が進んでいます。
パワード義足には、モーターによるユーザーのスムーズな歩行をアシストする「パワード膝継手」と「パワード足部」があります。
両大腿切断者の試着としては日本初となりましたが、次世代の義足「パワード膝継手」の試着をする機会がありましたので、その模様をお伝えします。
上述の通り、従来のコンピュータ制御膝継手は、歩くための動力はあくまで人の力によるものでした。しかし、パワード膝継手はモーターが屈伸運動をサポートし、階段の交互上り降りや椅子の立ち座りなど、負荷の大きい動作もしっかりと補助してくれるそうです。
実際に断端の短い僕の左足にパワード膝継手を装着して歩いてみました。
まず椅子から立ち上がる時に、はっきりとモーターアシストの恩恵を体で感じることができました。僕は健側が無いので、この機能だけでも感動しました!
膝が勝手に体を起こしてくれる
そんな感覚です。
その後は平行棒の中や屋内を歩き、膝継手の設定を僕の歩行仕様に最適化してもらいました。設定のたびに膝の曲げ伸ばしの固さが変わる感覚は、まるでサイボーグです。
パワード膝継手を装着してしばらく歩きましたが、その感覚は独特なもので、今までの他のどのコンピュータ制御膝継手とも異なる印象でした。
モーターアシストのおかげで楽に、そして体力消耗も穏やかに歩けることがはっきり実感しましたし、膝の曲がりがスムーズな分、逆に右足を待っている感覚でした。
僕は軸足を路面状況に応じて使い分けていますが、パワード膝継手を装着した左足なら、平地でも左を軸に歩くことができると実感しました。
機会があれば、今度は屋外を歩いてみたいと思いました。
高齢の方や両大腿義足ユーザにこそパワード義足を試してもらいたいです。
次世代の義足はまだ開発の最中ですが、将来がとても楽しみです。
そしてBionicM株式会社の研究開発チームの皆さんは本当に素晴らしかったです。
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