義足の業界事情に思うこと③
- Kyo
- 2021年2月8日
- 読了時間: 4分
更新日:2021年7月26日
対談形式で、両大腿義足ユーザーである石川さんに質問しました。
今回は“義足業界”がテーマです。
インタビュアー(以下Q):「義足の業界事情に思うことシリーズです。第一回では義肢装具士、第二回は理学療法士、ラストになる今回はリハビリテーション医について語っていただきます。
石川さんは、リハビリテーション医(以下;リハ医)と関わりはありましたか?」
石川(以下A): 「3か所で義足リハビリをしましたが、全部関わりがありました。ですが、リハビリを始める前から最後まで濃く関わったところ、最初だけのところ、全体通してゆるく関わったところ、と3か所ともリハ医と関わるタイミングや濃さは違いましたね。」
Q: 「病院・施設で関わり方が変わってくるようですね。どんな関わり方でしたか?」
A: 「一言でいうと、とっても厳しかったですよ。リハ医が理学療法士・義肢装具士に指示を出して、最終的な決断をするのもリハ医で。」
Q: 「決断というのは、具体的には?」
A: 「例えばリハビリの方向性とか。今後どういうことをリハビリで行うか、最初の2週間は何するかとか。理学療法士に聞いたうえでそれを僕に伝えるような感じです。ほかにも、リハビリ中にそばに来て、理学療法士に進み具合を聞いて『もっとこうしたほうがいい』とか口出しをしていました。」
Q: 「医師というと…とても威圧的なイメージがあるのですが…」
A: 「とっても威圧的でした(笑)。女医が多かったんですが、高圧的でしたね。僕の場合はリハビリを快く受け入れてもらえなくて。最初のところで作った義足でうまく歩けなくて、次のところへ相談に行ったら、『義足?もう持っているじゃないか。何でうちに来たんだ。』と煙たがられるように、吐き捨てるように言われました。」
Q: 「そういう態度は、職員である理学療法士や義肢装具士にも、同じように接していましたか?」
A: 「はい、見ていてそう思いました。みなさん委縮している様子でしたよ。リハ医がこうだからというと、何も言えないよって感じで黙って聞いて、それに従うって感じで。良くないですよ本当に。」
Q: 「でも、リハ医に義足や義足リハビリの知識がちゃんとあるかは疑問ですよね。」
A: 「僕も当時は義足の知識がなかったので分からなかったのですが、今になって考えると、多くのリハ医に知識はなかったと思います。知識がないならないなりに、黙って専門職に任せて、最後の処方とか決定権があるものだけハンコを押すとかしたほうがよっぽどいいです。せめて口を出すなら…口を出すというよりも、医療者や患者の目線に降りて、一緒に考えていく姿勢でいて欲しいです。」
Q: 「とあるところでは、義足の知識を持つリハ医が、強制的にパーツを決定してしまうとか…。」
A: 「正直、滑稽ですよ。患者目線でいうと惨いなぁと思います。患者さんの人生を左右する大事な場面で、その選択が本当にあっているかどうかもちゃんと考えず試したりもせずに、『あなたには合わない。あなたにはこれね。』と決めつけちゃうなんて。じゃあ自分が切断者になったら同じパーツで本当に納得するんですか?と。おかしな話ですよね。20年前と変わらない組織体制ってこと自体が問題であり、闇が深いと感じます。」
Q: 「そうですよねぇ…。他にも、関わってきたリハ医のエピソードってありますか?」
A: 「思い出したくないくらい嫌なエピソードばかりですよ…(笑)。
一番最初のリハ医は、リハビリが始まる前に部屋に来て『16歳なんだから大丈夫、歩けるようになるから心配しないで。』とさらっと言われました。何も分からない自分は期待してリハビリをしていましたが、一向に歩けるようにはなりませんでした。次第にリハ医の態度が変わっていき、何で歩けないの?と苛立っていました。まるで、歩けないのは患者である僕のせいと言わんばかりに。実際何が原因で歩けないのかは一切触れずに、『うちではこれ以上できないから。他の病院に行くんだったら行って。』と言われました。」
Q: 「すごいですね…。全国にいる切断者がそういう目にあっていないといいのですが…。
石川さんは、リハ医に望むことはありますか?」
A: 「リハ医こそ知識のアップデートが必要だと感じます。リハ医に知識があって『こういうものはどうだろう?』と提案し、理学療法士や義肢装具士がそれを試して、リハ医が話を聞くという関係図にならないとこの先も変わらないでしょうね。
もっと切断者や義足ユーザーの話を聞いて、そしてもっと勉強して欲しいです。『切断者ってこうでしょ。ここから切ってるならこの部品でしょ。』みたいな一方向ではなく、柔軟に対応していくべきです。相手が人なので、教科書通りにはいかないということを分かってもらいたいです。」
Q: 「今後、義足業界に期待することは?」
A: 「現状はピラミッドの頂点にリハ医がいて、その下に理学療法士と義肢装具士がいるので、リハ医が変わらないと業界はおおきく変わらないのではと思います。医療者の方みんなに共通しているのは、もっともっと切断者のことを知ってほしい。もっと義足ユーザーのことを知ってほしいです。」
義足の業界事情に思うこと。
このシリーズを読んだみなさん、どう思いましたか?
ぜひコメントやフォーラム(掲示板)で意見を交わせたら嬉しいです。
義足業界が発展していくことを切に願っています。
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